マッドハッターの保存の壺ブログ
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夢枕獏「キマイラ・吼」シリーズ紹介・感想
しばらく前にニュースで紹介されていたことから夢枕獏著「キマイラ吼シリーズ」がネットで連載される事を知った。

ニコニコ連載小説

実はこのシリーズ、少年だった頃(汗)から読んでいた。
第一巻「幻獣少年キマイラ」は1982年初版である。
なんと既に30年以上前…

で、読んでみようと思ってはたと気付いた。
私この作品全部読んでいたっけ?
長期シリーズ作品で2000年代になってからは極端に出版ペースが落ちていた。
本棚には「キマイラ群狼変」までしかない。
調べて見ると朝日ソノラマ文庫として16巻、ノベルズ(新書版)で1巻が出版されているようだ。
つまり最後の二冊、昇月編と玄象変は読んでいないという事か…
というわけで早速取り寄せて読んでみた次第である。
ここ数巻は登場人物の過去の因縁話が延々と語られていた。
玄象変でようやくそれも落着し、やっと舞台は現代に戻ってきた。

と言うところでストーリーの紹介^^

ストーリー

西城学園(高校)の新入生大鳳吼(おおとり こう)は入学式当日、万引き現場を目撃してしまったことから西城学園空手部に所属する不良学生灰島、菊池に絡まれる。
大鳳を救ったのはやはり同じ高校の巨漢の三年生、九十九三蔵だった。
ナイフを手にする菊池に物怖じもせず一撃を浴びせた九十九。
その直後亜室由魅と名乗る女性が現場に現れる。
由魅は九十九とは古い知り合いであるらしく、また灰島達の事も知っているようだ。
その翌日三年生久鬼麗一から大鳳は鬼道館(学内にある武道場)に呼び出された。
久鬼は九十九の知り合いであり、九十九もまたその場に呼び出されていた。
久鬼は大鳳達に暴力を揮った灰島、菊池をその場で制裁してみせる。

自らの無力を痛感した大鳳は九十九に武道を教えてくれるように依頼。
九十九は円空拳の師匠真壁雲斎に大鳳を紹介する。
雲斎は久鬼の師匠でもあった。
雲斎は一目見て大鳳が久鬼同様の「竜眼」を持っている事を見抜く。
強くなれば自分に正直に生きていく事が出来る、と訴える大鳳に対し雲斎は、喧嘩が強くなっても数ある競争のうちの一つに強くなるに過ぎないと諭す。

雲斎の元で修行して1ヶ月。
多少自信を持てるようになった大鳳は、事件に巻き込まれる。
同じクラスの坂口という名の強面が久鬼に決闘を挑んだのだ。
久鬼との決闘に敗れた坂口は八つ当たりで大鳳に襲いかかる。
大鳳がほのかに想いを寄せる同級生、織部深雪の目の前で。
更には深雪にさえ暴力を揮おうとする。
その時大鳳の中で何かがはじけた。

坂口達数人を一瞬のうちに叩きのめした大鳳はその後数日間高熱を発し寝込んでしまう。
病床にある大鳳の元に亜室由魅が訪ねる。
彼女は大鳳の求めるものを持ってやって来た。
一つは生肉。
もう一つは彼女自身、「おんな」であった。
大鳳と交わった由魅は大鳳を見下ろして呟く。
「キマイラが出てくるのも、もうすぐね」


↑は第一巻の途中までのストーリーだ。
書いていて思ったがなかなか説明しづらいストーリーなのだった。
高校が舞台で始まるが、二巻以降は殆ど高校生活は描かれない。
当初朝日ソノラマ文庫に収録されているが、必ずしもジュブナイルとは言い難い。
性的な描写もそれなりにあったりする。
というかそこはこの作品のテーマとしては避けて通れない部分なのだった。

「幻獣少年キマイラ」というタイトルが示しているとおり、獣人化する少年が主人公である。
獣人化する少年主人公、というと平井和正氏の「ヤングウルフガイ」シリーズなどが思い出されるが…
この作品の獣人、いわゆる狼男とはまったく異なる存在だ。
黒い剛毛に覆われてはいるが所々にはは虫類を思わせる鱗。
多脚で歩行し、身体の各所から頭と思しき突起物が生え、その中には口と牙だけを持ったものもある。
また身体を支える肢以外にも手足が垂れ下がり、血に飢えて殺戮を好み、天使のように美しい声で咆哮する。
地球上のありとあらゆる生物を混ぜ合わせたような奇怪な姿。
ギリシャ神話のキマイラ以上の化け物なのである。
当然(ほぼ)理性はない。

「ウルフガイ」シリーズが人間が失ってしまった生物としての魂の気高さを人間でもあり狼でもある犬神明が体現しているのに対して、「キマイラ」シリーズでは逆のアプローチがされているように思う。
暴力的な衝動、セックスへの衝動、食への衝動。
生き物としての衝動と言ってもいい。
普段はそれらを抑圧して生きている人間、主人公大鳳もまたそんな人間の一人なのだが、彼が強さを求めた時、それは歪な形を見せ始める。
犬神明が狼の魂を持った人間であるのに対して、大鳳吼は本人の望みとは無関係に無慈悲に本能で行動する獣と化する人間、なのである。

う~ん、まだちょっと言葉不足だ。
なんせシリーズが長くて、大鳳自身も少しずつ変わっていくし…設定も現段階で全て明かされてはいない。
また仙道がらみの話にもなっていったりする。
実は、ってほどでもないが雲斎は武道家でありながら玄道士なのだ。
大鳳のキマイラ化現象はその遺伝的なものもあるが、チャクラをコントロールすることで発現・抑制可能…という可能性は示されている。

実はこの作品、執筆開始から30年以上経っていながら作中の時間は半年ぐらいしか経過していない(笑)
作品冒頭が4月、玄象変では秋ということになっているからおそらく10月か11月だろう。

作者の夢枕氏が格闘技好きなこともあるのか、作中のアクションシーンは読み応えがある(と私は思った)

人間の精神は身体を変化させる事ができるのか?がおそらく一つのテーマであるのだろう。
お勧め^^
夢枕氏曰く「この本は絶対に面白い」

幻獣少年キマイラ―キマイラ・吼〈1〉 (ソノラマ文庫 211)

書き忘れていたが、ソノラマ文庫のカバー、挿絵イラストは天野嘉孝氏である^^

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